ギックリ背中

ギックリ腰は、一般的な名前ですが、その痛みと類似するような痛みが背中に起こる時があります。

私も以前二回ほど起こした時があって、窓ガラスを拭いていたら、「あれ~、背中が痛いなぁ~」と思ってしばらくすると、息をすることもできないような強烈な痛みに変わっていきました。 前に屈むこともできない程になったのを覚えています。

あきらかに捻った訳でもなく、普通に窓ガラスを拭いていただけです。ギックリ腰でも、あきらかな原因となる動作をした訳でもないのに、あれ~痛いなぁ~と思ってから激痛になることもあります。 


朝起きた時はそうでもなかったそうですが、しばらくして徐々に痛みが強くなり、気が付いた時には背中に激痛が走っていたとのことでした。 

場所は肩甲骨の下あたりの背骨よりやや左側という感じです。しゃがむのも激痛で、息を吸うことができない感じにもなっています。

私が以前起こした症状と全く同じです。特に大きく息を吸うと激痛になるので、ゆっくり小さくしか吸えないという状態です。 問題点は、左背中と左側胸部、左胸、腕にかけての筋肉系の異常です。広頚筋、大胸筋、上腕筋、上腕二頭筋、前踞筋、肋間筋、広背筋等の筋肉に反応がでていました。


特長的なのは、脇の下あたりに起こった筋肉の横の流れです。


これは大黄牡丹皮湯という漢方薬が適応でした。 大黄牡丹皮湯は、調胃承気湯という漢方薬をベースにして作られているようで調胃承気湯から甘草を取り去った駆お血剤という立ち位置です。炎症や排膿薬が入っているので排毒作用も強く出るもののようです。


一般的には、比較的体力があり、下腹部痛があって、便秘しがちなものの月経不順、月経困難、便秘、痔疾などに使う漢方薬のようです。

背中の痛みとは似ても似つかない症状です。また身体の下部に作用するような感じですが、意外にも上部の緊張にも効果があるようです。


もちろん、この漢方薬だけでは背中の痛みに全く効果はありません。組み合わせが必要です。 次ぎに適応になったのが「気」の病を治す柴胡加竜骨牡蛎湯という漢方薬です。

ベースは小柴胡湯が基本になっています。小柴胡湯は、胸脇苦満をとるのを主目的としていますので、それに鎮静効果の強い龍骨と牡蛎を加えてのぼせをとる働きが強化された漢方薬です。 


一般的な適応症状は、比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症:高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎ということです。 

これも背中の痛みというような具体的な書かれ方はしていませんので、この症状に合うとは想像がつきません。 更に、抑肝散という漢方薬が適応でした。鎮静効果のある漢方薬です。これも背中の痛みという具体的な症状とは想像できません。 


順番に手にもってもらうと、呼吸がしやすくなり、痛みが半減してきました。つまりこの処方で当たりということです。 薬剤師に聞くと、漢方薬はあまり得意ではない人が多いと聞きます。なぜなら、漢方薬の効能を生かし切っていないからではないかと想像します。 

あきらかに、一般的な適応症状だけ読んでいては、このような処方にはたどりつけないからです。身体の反応で、どんどん試していくことができれば、もっともっと発展するはずなのに、頭で考えてしまおうとするから漢方薬のポテンシャルを生かし切れていないというのが現状なのではないかと思います。 

漢方薬でも鍼灸でも同じですが、もっともっと身体の感覚を使った診断と治療を行うべきだと思います。しかし、今の教育では、そのような教え方をしない為に迷ってしまっているような気がしてなりません。若い鍼灸師は漢方薬の概念と合わせて調整できるような治療家が増えて欲しいなと思います。


西洋薬では、痛みの患者が来たら痛み止めは一択でしょう。つまりあまり考えなくても良い訳です。このような症状なら湿布か痛み止めという事で選択肢はあまりないはずです。もちろん、ギックリ背中は痛み止めを飲んでもよくならないことが殆どだと思います。 

考えなくても、感じなくてもできる医療ってホントの医療でしょうか?

こんな世の中になったのですから、もっと疑問を持って鼻を利かせて、しっかり身体を観察するということをやった方が、もっともっと沢山の人に喜んで貰えると思います。


10分ぐらいで8割ぐらいの痛みはなくなりましたが、あとの2割はどんどん動かしていくことで楽になってきます。動かさないと固まっていくので、身体が固まってしまうと動き初めの時にはまた痛みがでてきます。 これはギックリ腰と全く同じです。 

下のものを取るのも痛みがあったのに、自分の脱いだ服を何の躊躇もなくとって、楽になりました~と言って帰って行きました。 


御薗治療院

身体と意識の不思議な現象を体験してください

0コメント

  • 1000 / 1000