昨日の臨床的な例を話してみたいと思います。
足関節捻挫を 3日前にしてから痛みがあると言う学生でした。
足の状態を見てみると前脛骨筋がパンパンです。
当然ですが、足関節の背屈はできにくい状態になっています。
椅子に座って観察しているのですから、足に力が入ってる状態ではありません。
つまりこの状態では正常なら筋肉が緊張するはずがありません。
ところが緊張しているはずがないのに触ってみるとパンパンに緊張しています。
図のような場所にスジが立っているように見た目にもわかる程パンパンになっていました。
これは足関節捻挫のような場合、時々観察される現象です。
足関節を背屈できないわけですから、筋力低下があるのは明らかです。
無負荷な状態で曲げることができないというのは、筋力低下の最も著しい状態です。
腫れて痛そうだったので負荷をかける徒手筋力検査はおこなっていません。
可動域も少なく筋力低下を起こしているのはあきらかなのでやる必要がないからです。
こんな状態であっても背屈できるところまで背屈してもらうと前脛骨筋の緊張は緩むのです。
面白いですよね。
痛みがあるのですから底屈しようと背屈しようと緊張は同じかもっと緊張するはずだと思うのですが逆なんですよね。
足関節を全く触らないで痛みを取ることができれば、この問題が足首ではないということが証明されるはずです。
診断してみると思った通り、足関節には全く問題はありませんでした。
捻挫はきっかけであり現状の問題は捻挫が原因ではない痛みということです。
同側の僧帽筋の一部に異常があることがわかりました。
つまり同側の僧帽筋の異常が命令系統の異常とリンクしているということです。
ここに手を当ててもらうとそれだけで足関節の可動域がひろがり背屈がしやすくなりました。
本人もビックリしてました。
安静時の前脛骨筋の緊張状態も緩みます。
つまり、同側の僧帽筋を刺激すれば命令系統が正常化され、足関節は正常な状態に戻り痛みもなくなるということを意味しています。
そして同側の僧帽筋を緩める為の経絡は心包経で大陵という穴を選びました。
まあ、穴はどこでも効果があるのですが、これもリンクしているポイントの一つということです。
余談ですが、リンクしているポイントは全身の様々な場所にでてきたりします。
ここだけがリンクしているという訳ではないので診断はとても大事です。
僧帽筋は肩甲骨を上方向に引き上げる(肩をすぼめるような動作)ことのできる筋肉です。
この筋肉が収縮すると肩甲骨を上に上げられますが、上に上げながら後に動かす時にも使われます。
私達は解剖学を習うので筋肉単位で物事を考えてしまう癖があります。
専門家になればなるほど物事を分解して考えようとしてしまう悪い癖があります。
しかし、実際に悪くなっているのは僧帽筋全体ではなく図に示した僧帽筋の一部分のみです。
それ以外の僧帽筋はリンクしていません。
ここが重要なんですよ。これがわからないと意味をなしません。
手の当て方もその部分にのみ触れていると効果的ですが、余分なところを触ると効果は減衰します。
右の僧帽筋ですが、患側も右でした。
右足をあげる時には右手は後に移動させます。
つまり肩関節の後方伸展を行う訳ですが、この時には肩甲骨後方挙上します。
運動という面から考えてもリンクしているのがよくわかります。
このことから考えても前脛骨筋と僧帽筋がリンクしていてもおかしくない訳です。
もちろん足関節捻挫が僧帽筋と必ずリンクしているということにはなりませんからね。
そのあたりは身体の反応をよく聴いて診断しなければなりません。
この刺激のみでジャンプしても痛くなくなりました。
あきらかな変化です。
本人もビックリしてました。
もちろん大陵一箇所の刺激でほぼ即刺即抜です。
足を捻挫した。
足首が腫れている。
下腿部の筋肉もパンパン。
この状態を見て、足首が異常だと考えるのが普通の治療家です。
足首には問題がないと判断するのか足首にも問題があると判断するのかで治療効果は大きな違いがあります。
ちなみに患側ではない左側の下腿後内側や大腿後内側にも異常緊張があらわれていました。
つまりこれらの筋肉も連動して緊張していたということです。
調整を行うとこれら全ての緊張が緩んだ状態になったということです。
魔法みたいってよく言われますが、キチンとした理由があります。
捻挫が3日治らない?
それは捻挫とは関係ないということです。
なぜそれがわからないのか?
不思議でたまりません。
ここで重要な事実は安静時に緊張している筋肉は、その筋肉を使うと触診上緩むということです。
筋肉は筋力低下している訳ですから、収縮ではなく弛緩しているはずです。
だから筋力低下する訳ですからね。
触診上も緩んでいる訳です。
だからテンションが高くなり過ぎて筋力低下が起こったという説明には無理があると私は考えます。
情報系の異常だから情報系の伝達を正常化させてこそ効果があるという訳です。
筋肉の問題なら情報系をいじったところで変化はないはずですからね。
説明が重複してしまうのですが、もっと詳しく説明すると、力を入れた時に弛緩し、力を入れていない時に緊張するという誤った逆転情報が前脛骨筋に流れているということです。
つまり筋肉の状態が問題なのではなく、その筋肉に伝わる情報系が誤っているということなのだと思います。だから情報を操作するだけで痛みや腫れが一瞬で引いていった訳です。
もし緊張している筋肉の状態を変化させなければならないのならこういう現象は起こらないはずです。つまり局所かその周辺に刺激を加えない限り変化は起こらないということです。
筋力低下が起こるということは筋肉は収縮を止めている。
つまり筋肉が弛緩している。だから触診上も弛緩しているという状態になる訳です。
これは情報の誤作動によって起こる問題であって、捻挫をした足関節やその周囲にある筋肉そのものの問題ではないと考える方が納得がいきます。
だから遠く離れた部位であってもリンクしている部位であるなら、それを刺激することで逆転現象を正常化させることができるということです。
もし、筋肉のみの問題であるならこういう逆転現象は起こらないということになります。
正常なら力を入れた時に収縮し、力を抜いた時に弛緩するように情報伝達しているはずだからです。
もし、そうでないなら立って歩くことなんてできるはずがありません。
もちろん、全ての異常が情報系の問題だとは思っていません。あきらかに局所又は局所周囲の異常が原因で起こる緊張もあります。
そのような場合の原因は、局所か局所周囲にアプローチすることで状態を変化させることができますが、そんな場合でも情報系の異常が調わないと正しく修正できないというのが普通です。
だからどことリンクして異常を起こしているかを明確にすることはとても重要なことなのです。
この現象は、観察の視点を変えればお金をかけずにすぐわかる現象です。そしてもっとも基礎的な現象です。人間の身体を観察する上で、こういう基礎的な部分を解明していくことは価値の高いことです。
そういうことにもっともっと医療者は目を向けて研究していって欲しいと思います。
本には書いてないことですからね。
教えてもらうことではありません。自分で考え経験することではじめてわかることです。
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