東洋医学における臨床的な話しが続いていますが、衛気、営気、宗気、元気のそれぞれの説明をしてみたいと思います。ベテランの方にとっては、基礎的なことですが、臨床で得た私自身の解釈が大いに入っていますので、参考にして頂ければと思います。あくまでも私なりの解釈なので、専門家の批判があっても反論はしません。
まずは元気からです。
元気
元気は、(原気、真気)とも言われていて、東洋医学の中では、最も重要な気と言われています。
あの人は元気だとか、元気がないと日常的に使われていますが、以前の症例でもお話したように元気は全身で落ちることは少なく、右側だったり左側だったりと部分的に落ちている感じというのが私の見解です。そして元気の落ちているところは、何らかの症状がでている可能性が高い。
全身の至る所に存在し各々の組織を機能させ、生命活動の中心的なエネルギーになっていると説明されています。説明されていても、そんなもんか~というぐらいにしか普通は理解できませんが、筋力検査を行って身体の反応を診ながら観察していくと様々なところに元気不足が出ている状態が観察されます。治療の手がかりになりますので、しっかり診断すると認識しただけで効果がでることも多々あります。
例えば風邪のひきかけでインフルエンザになろうとしている人は、鼻から咽の元気が著しく衰えます。それに伴って、宗気(後で説明)も衰えて呼吸機能が低下します。つまり元気が単独で低下するのではなく、宗気や衛気(後で説明)と言った「気」も同時に低下することが多いということです。
インフルエンザでも普通の風邪でも、なるべくしてなります。なる状態になっているからなる訳です。元気があって「気」が巡っているのに突然なるということは、考えられません。
だから休息や規則正しい生活が大事と言われる訳です。もし、うつされるという概念が正しいなら、冬中私はインフルエンザに罹っていなくてはなりません。診察中マスクもしていないので、直接感染しているはずですからね。
元気は、普段は、腎臓の腎(東洋医学では腎臓と言わず腎と言い、腎臓の機能だけではない機能も含まれます)に保存され、元気が不足すると、臓腑も組織も機能が下がり病気にかかりやすくなります。
もちろん、元気は身体の至る所にあるとされているので臓器にも元気がない部分というのがあります。それも左の一部だけとか右の後側だけという形で低下現象が起こることが多い訳です。
腰のあたりから元気を補充するという考えが古典の記述にはあります。
高齢になって、腰引けの姿勢になってくると腎が弱り、生命活動そのものが低下するから元気がなくなる訳です。
ただ、腰は単独で悪くなりません。必ず咽や鼻と言った上半身の異常と対になって問題を起こします。これは身体の構造上の問題でもあります。腰をひいたら顎も前にでてくるのは当たり前ですからね。腰をひいたままで顎が引けてたら立って歩くこともできません。そのことから腎が元気を所蔵するということになったんだと思います。
これが先天の「気」と呼ばれる作用なんだろうなと思っています。先天の「気」とは親から受け継いだエネルギーということです。これを腎が貯蔵すると書かれています。生きていこうとする生命活動の源という意味でしょう。
仙腸関節を調整すると全身が整うとかと言う人がいますが、この機能の一部のことを見てそういう結論に達しているのでしょう。しかし、それはあまりにも全身を診ていないことになります。
それに対して後天の「気」というのがあり、これは脾や胃の働きで、つまり食べたものや吸った空気からエネルギーを生成する訳です。後天の気から元気を回復させることができると言われています。
食べ物は大事ということをよくあらわしています。
よく観察すると、元気がなくなると、営気(後述します)も機能が低下していることがよくあります。腰を引くと影響がでるのがお腹が凹むことですね。
腰を引いた姿勢をとってもらえれば、その意味が普通にわかるでしょう。
元気は至る所に存在する「気」ですから、この「気」の低下する部位は、いわゆる機能低下を意味するということでしょう。機能低下から本当の臓器の低下になって、病を引き起こすというのが東洋医学の基本的な考えです。
症状のあるところではなく、この元気の低下しているところを見つけられなければ、基本的に東洋医学とは言いがたいと言える程、東洋医学の基礎だと思われます。
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