画像を撮る意味
初診として来院された全ての患者さんの、顔と舌、手の平 手の甲、そして足と、身体全体を前後から画像を撮ります。 それは、先に述べた「望診」の情報として、患者さんの初診時の身体の歪みを記録しておくためなのです。
そして受診時に毎回舌の画像を撮るのは、先にも述べたように舌が様々な臓腑の異変や体調具合を表していて、それが治療をしていく段階でどう変化してきているか、あるいは今日はどういう風に身体に冷えや熱ががあるかなどを診るためです。
手の平や手の甲、足を記録するのは、この患者さんが遠隔治療を希望した折に、この画像を出して、穴(ツボ)反応を確認するためです。
あるいは気になる患者さんの場合は、診療が終わってからもう一度、画像から今日の治療が効いているのか、あるいは症状がどう変化しているかを診断しています。
気の診断の面白いのは、数年前の画像であっても、いざ診断を始めるときは 現在の身体を診るという条件付けにおいては、今日現在の反応が出ているのです。
これは上手く説明ができないので、次回に譲りたいと思います。 次に、後で述べるといった手のひらを上に向ける意味は、手のひらには風邪の進行状態を示す診断点が6つあるからなのです。
親指側から、太陽、小陽、陽明、太陰、小陰、蕨陰とあって、病の進行が表層に現れていて、背筋や首筋がゾクゾクしたり、背中や腰が痛くなるという「太陽病」から、難病や癌にまで移行していく「蕨陰病」の6段階に分かれているのです。
それを左右の手の平を見て、中村先生はおよそ2秒ほどで診断します。このような穴を「診断孔穴」と呼んでいるのですが、本来は私たちが所属していた京都の気診研究会で小田先生から学んだものです。
例えば患者さんが風邪をひいて頭が痛いといって来院しました。 ある程度の問診を終えて、すぐに風邪の反応なのかそれ以外の理由なのかを区別する気の診断に入ります。その後、どちらの反応であったとしても、その反応が強く現れている場所を大雑把に身体の天(胸から上)人(腕を含む胴体)地(足)の三箇所のいずれかで見つけます。
そのために、患者さんには中村先生から少し離れて座ってもらい、先生から患者さんの頭から足の先の上下20センチほどまでの空間をあけた身体全体が見える位置に座っていただきます。
三焦のいずれかが解ると、更にその部位の前後左右上下を診断して、強く反応する部位を見つけ、それを圧して「ここは痛くないですか?」と患者さんに確認しているのです。
想像もつかない場所を痛くないかと尋ねられるので、呆気に取られて敢えて痛くないという人もいるが、「それでは同じ場所のこれと、全く反対側のここは同じ痛みですか?」
と再度尋ねられると、痛みが全く異なることに初めて気がつきます。
つまり頭が痛いといって来院したのに、全く予想もしていなかった肘を押されて痛かったり、指をつかまれて痛かったり、右を向いたり、左を向いてお水を飲んだかと思うと、おされた痛みは消失し、同時に肝心の主訴である頭痛も消えているので、小学生の子供の患者さんからは中村先生は「魔法のおじちゃん」と呼ばれているのです。
ですが、その「魔法のおじちゃん」にはとても綿密な計算され尽くした診断があるのです。 手を前に出す理由はもう一つあります。 前腕部には、治療法を確定する診断経気というのがあるのですが、そこで治本、治標、局所(経絡治療法では本治、標治、局所という)といって、鍼灸としての取穴方法の基本である治療方法を選択するのです。
実際には専門的になって難しいので割愛しますが、その診断経気は鍼灸的に見た場合と、漢方的に見たり、難経といって鍼灸の古典的かつ基本的な寫法を決める手技で見ていくと、更に拡張していくのです。ですから、実際に中村先生が診断しているときの頭の中は、当に数学の微分になっているのですね。
ですがそんな難しい中村先生の頭の中身はちょっと放っておいて、大まかにいうと、一般的鍼灸では、治本は疾病の本質、治標は出ている現象、局所とは症状が出ている場所そのものに対処していく治療方法です。
例えば、中村先生はその治療方法を更に詳細に分けて、治本と診断したら、治本に対応する穴を探します。ちょっと難しいのですが、その穴を中心にした気の輪のような経気線という円環があって、その円環にも穴があり、その中から全身に影響を出せるであろう治療法を更に選択しているのです。お腹で治療をする夢分流では小槌の様なものでコンコンと叩かれます。
または腹部にそのまま鍼を打たれることもあります。経筋治療といって、筋肉を養う経絡の治療の場合は患者さんに身体をひねってもらいながら治療を受けてもらうことが多くなります。このように数学でいえば様々な条件を含んだ集合体における和集合の中に、全てに通じる一点を見つけているようなものですが、書いている私自身の頭が混乱してくるような穴の選択を、中村先生は瞬時にやっているわけです。
そして、やっとこさ選んだこの穴を刺激して(普通はちょっと押したり、指で触れたりしているだけ)で全身への影響が最大になっている穴であるのかどうかを関節の動きや、圧通の軽減などで確認しています。
それが確認できたら、鍼を打つか、テープを貼るか、更には皮内鍼を入れるのか金粒か銀粒のいずれを貼るか、あるいはオルゴン経絡棒で刺激するかを更に診断して決めているのです。 とここまで書いている自分がちょっと溜息が出てきました。 しかし、実際はもっと詳細に、もっと様々な情報や診断方法を取り入れています。
また次回に書かせていただきますが、受診時に必ず患者さんに飲んでもらっているオルゴン水も、その患者さんにとって今必要な漢方薬を選び、その漢方と同じ作用を持てる気を注入して飲んでもらいます。
ですから、実際の漢方薬を飲まずとも、発汗したり、急にトイレに行きたくなったりします。 そしてこれら一連の治療が、大体10分から15分程度、早い人だと5分以内に終わってしまうのです。
何故こんな難しい手順を、私があえて説明したいかと言うと、手から簡単に出る気を人に送っていると思われたくないからです。
それはどこかの新興宗教の手かざしとなんら変わらないではありませんか?
そんな簡単なことで人を治せるのなら、鍼灸学校に3年も通い、国家試験を受け、様々な研究会や多くの書物を買って勉強するわけがありません。
西洋医学とタイアップできる知識をできるだけ持ち合わせ、更に、それこそ気の遠くなるような東洋医学の深遠に少しでも触れながら、病気という「気」に果敢に挑戦していきたいと考えているからなのです。
人間という小宇宙の秘密に、私たちは治療を通じて深く深く拘っていきたいのです。人間は何故病気になるのか、何故治る人と治らない人が居るのか、何故治せる人と治せない人がいるのか、私も中村先生も、その原因を知りたいと何時も思っているのです。
人間の病気は簡単な様で難しく、難しいようで簡単だという禅問答をしている部分があります。また難しい手順を踏んだら治せるのかと聞かれれば、それも解りません。ですが、その場限りではなくて、同じ条件で診断を重ねるなら、どの人にも同じ回答が出なければならりません。一人の人間が神業的な治療ができても、それは多くの人を救う手立てにならないと考えると、今は様々な手順を踏んでも、確実に毎回同じ答えを出せるシステム立った治療方法を確立するために、研鑚しているのです。
中村先生は、他の天才同様に、99%の惜しみない努力と、1%の運によって今の治療法を編み出していることを、来院してくださる患者さんにできる限り知って欲しいと思いました。
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