年末年始で風邪をひく人は多かったのではないかと思います。
年末年始は生活がどうしても不規則になったり、暴飲暴食で動かなかったりすることから、エネルギーが過剰になって風邪をひくというパターンが多くなります。
その時に問題になりやすいのが胃腸係の風邪です。
東洋医学的には陽明系の風邪ですが、これがどの深さにあるかで状態が変わってきます。
皮膚なのか、筋肉なのか、血管や神経、リンパなのか、骨まで入っているのか?
選択肢をひろげると状態が明確になってきます。
特に筋肉やリンパ系に陽明系の風邪の反応が残ると、咳が主症状であっても胃腸系の調整をしないと咳が治まらないということもあります。
呼吸器系の症状だから呼吸器系を狙えば効果がある訳ではありません。
鼻腔から咽頭にかけてウィルスや菌が入ったのは確かであっても、胃腸で留まる風邪のひきかたをしていると、咳や鼻水等が、なかなか改善しないというパターンも多くなります。つまりねらい所が全く違うということになります。
その主な異常が筋肉で留まっている場合、熱もないし、身体がだるいというだけで動こうと思えば動けたりします。そんな風邪を年末にひいた人は多かったのではないかと思います。
分解して考察すると様々な筋肉が関係していることがわかります。広背筋や僧帽筋はもちろんですが、全てではありません。一部分のみです。特に縦に走る異常があるのは腰腸肋筋、胸腸肋筋、頚腸肋筋という広背筋や僧帽筋より深い筋肉が問題になります。
これらの筋肉は肋骨にも影響しているので、呼吸に影響があってもおかしくないということも言えます。
もちろん肋骨挙筋や脊柱に近い胸棘筋や多裂筋等の一部の異常もありましたが、胸椎7番あたりのみで最優位となり、全体にはひろがっていません。なので直接呼吸に影響を与えている訳ではないというのが考察できます。
背中の緊張を起こしているのは、胸腸肋筋や腰腸肋筋などの縦に走る筋肉が主です。しかもこれらも一部分なので、筋肉を一つの塊で考える考え方は不適切です。鍼を背中に直接打つ場合も、それを考慮して刺激しないと効果的にはなりません。闇雲に打っても効果はないということです。
筋肉を一つの単位として考える考え方や主動作筋という考え方は、わかりやすいし、アカデミックなように見えますが、臨床は、そんな論理的ではなく、もっと泥臭くエグいものです。
鍼灸師は背腰部に鍼を多く打ったりしますが、こういう現象を理解していないと必ずオーバードーゼになります。特に風邪をひいて体力が有り余っている状態の風邪(実証)は筋肉でなんとか頑張ろうとするので、正常な部分も多いので、それに刺激すると逆効果になることもあります。
術者にそれを射抜く力がないと、なかなか体力を回復させられません。
沢山刺激すれば、効果があるというのは幻想ですし、時間を長くすれば、効果があるというのも幻想です。特にこのような例は体力が完全になくなっている訳ではないからです。
たぶん、想像以上にオーバードーゼになりやすい状態だと言えます。
明確な狙いを定めて、効果的な刺激をしないと、一時的に良くても反動も起こりやすくなります。
刺激は、波立っていない水面と同じです。一つの刺激なら、その刺激を中心にした波紋しか起こりませんが、二つ刺激したら、波紋は、どこかで打ち消し合います。
こういうことも理論的にはわかっていても、実際にそういうことを考える人は少ないのが現状でしょう。大切な身体ですから、オーバードーゼには細心の注意が必要ですね。
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