顔面部の触診

いわゆる顎だしの状態になっている人は舌骨と下顎骨の間に腫れがあります。

逆に言えば、この腫れがなくなれば顎だしの状態がなくなるということにもなります。

舌骨は左右にまたがる一つの骨です。下顎も一つの骨です。

左右にまたがる一つの骨は、脊椎もそうですし、仙骨もそうです。左右にまたがる形から考えると、脊椎より大きな振幅幅をもっている骨と言えます。それが頭部に集中しています。


これは何を意味しているのでしょうか?


バランスということを考えると、小さい振幅幅を持つ脊椎にエネルギーが集中しやすいのはわかります。それに対して下顎や前頭骨、後頭骨、篩骨、蝶形骨、仙骨、舌骨は、左右につながっているのですから、大きな振幅を持つ器官と言えます。

つまり脊椎の小さい振れ幅のものをダイレクトに伝えられて変化しているものと考えられる訳です。その振幅状態を観察することは、バランスを考える上で非常に重要です。


コマの構造から言えば、芯が脊椎で、下顎や蝶形骨は、コマの外周と言えます。

人間の身体はコマと同じです。

それは40年近く前に空手をやりはじめた頃から、そう思って練習をしてきました。片足で立って、対側の足を振り回すという動作を行う訳ですから回転軸がぶれれば、身体全体に影響を与えます。

そして回転軸というのは常に回転している軸です。静止しているように見えて回転を伴う軸だと考えられます。

どんな体勢になっても、中心で回転するエネルギーが乱れなければ、うまく力を出せるということです。それに意識を向けながら練習をしてきたので、見た目にも綺麗な蹴り方をしていたと思います。


バランスというのはコマで言うところの回転力です。この回転するエネルギーがないと真っ直ぐ立っていることすらままならないはずなのです。それは身体に対して足が小さいということからもわかります。つまり、左右にまたがるこれらの骨を観察すると、脊椎で起こっている回転エネルギーの状態を観察することができるということです。


だからカイロ等の手技療法で仙骨や蝶形骨をよく観察するのだと考えると非常に納得がいく訳です。

またこれらの動きは、いわゆる自律神経失調や精神症状に大きく影響を与える骨だと考えられます。



コマは大きく傾いても回転力さえあれば一つの軸で立っています。手足を大きく動かしても、それに対して中心の背骨やこれらの骨が逆回転するエネルギーがあってこそ手足を振り回せる訳です。歩行は、手足を振り回しているからできる訳です。


バランス、バランスと言う治療家が沢山いますが、そもそもバランスというのなら、この観察ができなければなりません。人間の構造は、四足歩行の動物のバランスとも半二足歩行の動物とも違います。他の動物とは全く違う構造をしていると言える訳です。重力に対する原理は同じでも、より高度なバランスを必要としているということです。


闇雲にバランスという言葉を使わないで、バランスという根本的な意味を理解して使って欲しいなと思います。

バランスを言う治療家がいたら「なんのバランスですか?」と聞く必要があります。

構造的なバランスは、食事のバランスや睡眠のバランス等全てのバランスの元となるものです。いわば、構造的バランスが、他のバランスを表現したものだからです。

だからダイレクトに体調に影響してきます。

ここを観察することでアンバランスを予測し、調整することができるということになります。






しかし、よく観察すると右の方が強く腫れていたり、左の方が強く腫れていたりします。

また馬蹄形の骨なので、前側と後側があります。左前側が腫れると右回旋が起こりつつ右側屈の状態になりやすくなります。

頭部の位置にも大きく影響を与えているということです。


また下顎の後方の下顎角の対側が腫れやすくなります。舌骨の位置では右回旋しながら、下顎の位置では左回旋するということが起こります。

顎を前に突き出すような形をとる場合、決して真っ直ぐ前に出るのではありません。


これは断言できるのですが、必ず右へ回旋したり左へ回旋したりしながら前にでてくるのです。

関節には必ず回転の動きを伴っているということですが、見た目には真っ直ぐ前に出ているように見えるのです。

ここで観察者は騙されます。真っ直ぐ前にでているから顎を引けば良いと考えてしまいますが、元に戻るか、そもそも顎を引くことができません。

無理やり顎を引くと咽がつまる感じになり苦しいだけです。


左の舌骨の前が腫れていたら、舌骨を左へ回旋させながら後に方向に力をかけます。

それと同時に右の下顎角の後方にある環椎を右回旋させながら後方に力をかけます。

これで舌骨より上の関節に後ろ方向に力がかかります。


ストレートネックだからとか、顎を出す癖があるからということで顎を引くように意識してもうまくかないのはその為です。



咽主体の腫れと口主体の腫れ、鼻主体の腫れ、前頭部主体の腫れがあります。  

これは縦ラインです。  

また縦ラインとは別に横ラインが存在し、頬骨ライン(鼻先から耳、後頭部)と前頭骨ライン、蝶形骨ラインには横軸の異常があります。 


頭蓋の歪みも物理的な影響を受けています。 もちろんつながって腫れている場合もありますが、頭蓋部の刺激で重要だとされている部分が何故重要なのか? 触診をしながら解剖図を眺めるとよくわかります。 いわずと知れた解剖図なのですが、骨を透かして鼻を浮き上がらせて表示すると、鼻がいかに頭蓋部に影響を与えているかが想像できます。 脳底を支えている蝶形骨の真下に鼻咽腔があります。そして前頭部まで副鼻腔の前頭洞があります。 脳神経系で重要とされている下垂体や視床、視床下部も篩骨洞の真後ろにあります。 延髄や橋と言った生命活動に欠かせない脳神経系も咽頭喉頭の真後ろにあるのです。 これだけ近い位置にある訳です。鼻が脳神経系の重要な機能に影響を与えてないと考えない方が普通ではありません。 鼻の中は生きていく上で重要な空気が常時流れている訳です。鼻に何らかの炎症が起これば、脳神経は影響を受けるはずです。    

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