認識は何故必要か？

なぜ認識が必要なのでしょうか？

船や飛行機は車とは違い地面のような一定の基準がないので、波や風の影響で常に揺れながら走ります。人間の生活圏は殆どが地面という動かないところなので、地震がない限り地面が揺れるということはありません。つまり一定の基準があるということです。

人間は、二足歩行なので、四足歩行の動物よりバランスがとりにくくなってます。二足歩行と四足歩行は、バイクと車の違いみたいなものです。

何もしなければ倒れてしまうバイクと、何もしなくても倒れない車とは安定度が全く違います。四足歩行の動物とは、バランスという意味で決定的に違うということです。

そんな不安定な人間が風や波の影響を受ける船の上でバランスをとろうと思った時一番重要なことは何でしょう？

脚力ではありません。もちろん、自重を支えるぐらいの脚力は必要だと思いますが、特別な筋トレが必要でないことは誰が考えてもわかると思います。

脚力より、「今」自分がどれぐらい傾いているのかを知る必要がある訳です。５度傾いているのか１０度傾いているのかを感覚で知っていなければバランスをとって保つことは不可能だと思います。１０度傾いているのに反対方向に３０度傾かせるような力をかければ、逆方向に倒れることになります。つまりバランスがとれません。１５度傾いていたら、それに見合う力を出して反対方向に傾かせるというのを行います。そしてこれを連続的に行うことで、地面が揺れても揺れなくても立っていることができるようになるということです。

これで終わりという時点がなく、「今」が何度も何度も延々にくり返される訳です。

治療も全く同じで、「今」何度傾いているのかを認識していなければ、治療過多になってしまう可能性があります。治療過多は、一般的には強烈な刺激のことを言うと考えている人も多いと思いますが、弱刺激であっても不必要な刺激は過剰刺激になります。１５度傾いているだけなのに、３０度傾かせるような刺激をすれば当然反対方向に倒れるという訳です。

まず、身体の状態がどうなっているのかを知ることが大事なはずですが、意外にそれを知ろうとせずに治療を始めてしまう人も多いように思います。私は、よく調整という言葉を使います。調整は、「今」どういう状態になっていて、それを改善する為にどれぐらいの刺激を何処にするのかというのを明確にできてこそ可能になると言えます。