私は高いところが嫌いです。
ジェットコースターが嫌いとかはないので、高所恐怖症という程ではないし、スピードが嫌いな訳でもありません。
人間は二本足で立っているのが正常だと感じています。というより、それが慣れた状態なので、二本足で立てないことを、かなり恐れるんだろうなと思います。
生存本能だと言う人もあるかもわかりませんが、それなら高いところに登って平気な人がいるのを説明できません。
だから高所が怖い人って、生存本能で恐れているのではなく、何かの経験や思考から恐れるのではないかと思います。それを考えていて思い出しました。小さい時に転倒した時のことです。
後にひっくり返って、腰から抜けるような感覚がありますが、意外にも高所が怖いというのは、無意識にそれを思い出しているのではないかと思いました。
落ちるような感覚が高いところに登った時にフラッシュバックするので、高いところが苦手だと感じるのかもわかりません。予期せず尻餅をついた時の感覚に酷似してますからね。
このことに気づいたのは、船を上架した時に整備するのに船の上に立ってみると、地上から見ている以上に高いので、怖いなぁ~って思います。マストの上に登ると更に怖さを感じます。
マストの中間ぐらいでも結構怖いです。
その時に何が怖いのかを考えると、「思考」しているんですよね。
風が吹いてきてよろめいたらどうしようとか、足を滑らせないかとかね。思考は、様々な幻想を作り出し恐怖を起こします。
思考することの厄介なところは、思わぬ想像をしてしまうことです。予期せぬ事態が起こると尚更です。自分が思った通りに進んでいる時は良いのですが、些細なことでも予期せぬことが起こると想像力を膨らませパニックを起こしやすくなります。
またパニックは、恐怖だけではなく、泣き出したり怒りをあらわしたりもします。感情が強くなるのだと思います。それがパニックを起こす一つの危険信号です。しかし、厄介なのは、それがパニックを起こす信号だと気づかない場合です。そして意外にも自分は大丈夫だと思い込んでいたりします。
また恐怖と身体の硬さや姿勢は密接な関係があります。普段から身体が硬い人、特に手の硬い人や肩に力が入りやすい人は、その傾向が強くなります。
高いところが怖くない人は、高いところでも肩の力を抜いて普通に歩きます。怖い人はへっぴり腰で肩に力を入れて歩きます。怖がっているか怖がっていないかは、姿勢を見れば一目瞭然です。
無意識の命令が出て、身体を自然に固めるのだろうと思います。そういう意味からも普段の姿勢はとても重要です。
怖さを乗り越えるには、何度も高いところに登ることが大事です。そして無事に降りてくることです。船を上架して作業しなければならないというのを毎年繰り返していると自然に怖さがなくなってくることに気づき、自分でもビックリしたことがあります。
思考してないんですよね。そういう時はね。
恐怖感を乗り越えるには、思考でそれを乗り越えることは不可能であり逆効果です。つまり、どれだけ怖くない条件を提示して、怖くないからと思っても何の意味もないということです。余計に酷くなります。
恐怖というのは理屈じゃないんですよね。
船を下架して、海の上に浮かんでいると、桟橋と船の間は、ちょっとした段差ができます。
ゲストを船に乗せるとわかるのですが、その段差だけでも怖がります。その時にライフラインがあるので、それをまたがなくてはならないので、人によっては、かなり怖がられます。しかし、何度か乗っていると、そんなこと気にせず乗れるようになってきます。怖いという感覚すらなくなります。
また、ヨットは、帆走していると、想像以上に船が傾きます。地面が左右前後上下に揺れるという経験は、普段の生活ではありえないので、波が高いと最初は移動するのはかなり怖いです。高所での怖さとはまた違います。乗ってみると想像以上だとわかります。もちろん、普通の風なら、そんなことにはなりませんから、安心して気持ちよく乗れます。
しかし、急激な天候の変化は、待ってくれませんし、休むこともできません。そんな状況でも船を走らせる為には作業をしない訳にはいかないので、何度もやっていると、やらなければならないことに集中できるようになります。一人で乗る時は、それを全て自分がやらなければなりません。
しかし、どれだけ乗って慣れても、やっぱり急激な天候の変化は恐怖を覚えるんですよね。ええ感じで帆走しているなぁ~と思っていると、急に嵐のように吹いてくることがあります。
ただ、そんな状態でも域値があって、腹をくくると怖くなくなるので、目の前の作業に集中できるようになります。そうなるまでは、自分は大丈夫とは、絶対に思ってはならないというのが荒天になった時のコツだなと感じます。油断は禁物なんですよ。泣いてもわめいても天候は変わってくれませんからね。
電柱に登って事故があるのは圧倒的に登る時より降りる時だと言うのを聞いたことがあります。恐れることは決して悪いことではありません。注意深くなるのと感情を乱してパニックになるのとは意味が全く違います。
非日常で未知のものは、誰しも怖いのが普通であり、それが正常な反応です。恐怖症とは違います。必要なことは、経験することであって思考することではありません。思考すればする程、奥底に恐怖が生まれる隙を作ってしまうのに気づきます。
思考しないと高所でも真っ直ぐの姿勢でスタスタと歩けるようになります。船上では、地面が揺れるので、そう簡単ではありませんが、慣れると普通に歩けるようになります。遊びの中でも、沢山のことに気づきます。そして身体と精神を使うということを覚えます。
だから海に出てヨットに乗るのが好きなんです。
ただ遊んでるだけではない!!
ということにしてね。
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